「親が頑張る背中を見せれば、子どもも自然とやる気を出すはずだ」 子育てをしていると、一度はそんな立派なことを考えてしまいますよね。
実は私にも、そんなドロドロの「親の下心」から、自分の限界を超える無謀な挑戦に手を出した過去があります。
最初はただ、休日に一人で自転車に乗って遠くへ行くのが楽しくて走っていました。でも、息子に本格的なロードバイクを買ってあげた頃から、だんだん彼のスピードについていけなくなり、「ロードバイクってやっぱりカッコいいな」と、つられて自分用の機材(ロードバイク)を購入したんです。
ちょうどその頃、息子は家での自主練を全然やっていませんでした。 そこで私の中の「お節介な料理人」が顔を出しました。
▼ なぜ私が子育てにおいて、この『お節介な料理人(親)』になることをこれほどまでに警戒しているのか。その核となるマネジメント哲学はこちらの記事で解説しています

「そうだ、親である私が『1日に200km走る過酷なイベント』に挑んで、ボロボロになりながらも完走する背中を見せつければ、あいつも心を入れ替えて練習するはずだ!」と。
完全に、自分が主役(プレイングマネージャー)になって、強引に息子のモチベーションをコントロールしようとしていたんですよね。
でも、数ヶ月かけて入念に準備したその壮大な「親の背中作戦」は、スタートしてあっけなく、無情なパンク音とともに散ることになります(笑)。
今回は、私のちょっと情けなくて笑える失敗談と、そこから「自分が主役を降りて、最強の裏方に回る」と決断するまでの、リアルな心境の変化についてお話しします。
「親の背中」を見せるために挑んだ、200kmの過酷な挑戦
そもそも「ブルベ(Brevet)」という言葉、一般の方には馴染みがないですよね。これはレースではなく、制限時間内に200km〜1000kmといった超長距離を完走することを目指すイベントです。順位はつきませんが、過酷な環境を走り抜く精神力と体力が試される、「大人の持久力テスト」のようなものです。
私がエントリーしたのは「200km」。自転車を購入してからわずか5ヶ月、週末に一人で20km、30kmと距離を伸ばしていくのが楽しくて仕方がなかった頃のことです。
でも、挑戦の理由は「自分が走りたいから」だけではありませんでした。 正直に言えば、家で全然練習しようとしない息子への「当てつけ」のような下心がありました。
(パパだってこんなに頑張ってるんだ。200kmも走る背中を見れば、お前も少しはやる気が出るだろ?)
エプロンをつけた料理人の私は、自分が「完走」という最高のスパイスを振りまくことで、息子のやる気を無理やり引き出そうとしていたのです。
開始30分。無情なパンク音とともに「糸」が切れた瞬間
数ヶ月かけて入念にトレーニングを積み、機材も整え、いよいよ当日。 意気揚々とスタートを切ったのも束の間、開始わずか30分で、ロードバイクの乗り心地が「何かおかしい」と異変に気づきました。
パンクです。
予備のチューブに交換すれば再開は可能でした。でも、道端で一人、真っ黒になった手で作業をしながら、自分でも驚くほど冷静に、心の奥で「プツン」と何かが切れる音がしました。
「あ、もういいや。これ以上頑張らなくていいや」
あんなに準備してきたのに、再挑戦しようという意欲が1ミリも湧いてこなかったんです。 「親の背中を見せる」という壮大な計画は、たった一枚のゴムの破れで、呆気なくゴミ箱行きとなりました。
自分が走るより、「息子の成長」をハックする方が楽しいという気づき
なぜ、あんなに簡単に糸が切れてしまったのか。 リタイアを決めてトボトボと帰る道中、私は自分の中にあった「本当の関心事」に気づきました。
実はブルベの準備をしていた数ヶ月の間、私は自分の練習以上に、あることに夢中になっていました。それは「息子がどうすれば前向きに練習するか」を考え、AIを使って海外のトレーニング理論を学び、彼にとって「最高の素材(環境)」を揃えることでした。
私が必死に200km走る背中を見せるよりも、AIで見つけた効率的なメニューを彼に提案し、彼が少しずつ「あ、これならできるかも」と前向きに練習し始める姿を見る方が、私にとってはるかに面白い「エンタメ」になっていたんです。
▼ 私が「自分が走ること」を手放してまで夢中になった、AI(Gemini)を駆使した最先端のトレーニング環境(Z2)構築の裏側はこちらです

「自分が主役になって走ること」への飽きと、それ以上に「マネージャーとして息子を伸ばすこと」へのワクワク。パンクはその優先順位をはっきり分からせるための、決定的なスイッチだったのかもしれません。
「最強の裏方」としての、新しいトレーニング
それ以来、私の練習量はガクンと落ちました。 もう、ブルベに再挑戦しようという意欲は今のところありません。
今の私の自主練の目的は、ただ一つ。 「どんどん速くなる息子が『パパ、一緒に走ろう』と言った時に、千切れずについていける体力を維持すること」。
もはや自分が一番を目指す必要はありません。息子という「未来のプロシェフ」が最高の料理を作れるように、市場から新鮮な情報(データ)を仕入れ、機材という厨房設備を整え、必要なら伴走車として横を走る。
主役を降りる。それは負け惜しみではなく、もっと面白い「育成」というゲームに全振りするための、私なりの前向きな引退宣告だったのです。
【親のためのマネジメント視点】今日の気づきとメソッド
子育てもビジネスも、「背中を見せて引っ張る(プレイングマネージャーになる)」というのは、実はものすごくしんどいし、うまくいかないことが多いものです。
親が「ほら、パパもこんなに頑張ってるんだから!」と汗を流して前を走っていると、子どもは「親の期待」という重たいプレッシャーを感じるか、逆に「勝手にやってるな」と冷めてしまうかのどちらかになりがちです。(私の場合は、パンクであっけなく自滅して終わりましたが……笑)。
今回、私が身をもって学んだのは、「主役を降りる勇気」でした。
親が「俺についてこい!」と前を走るのをやめて、子ども自身が料理をするための「最高の素材(AIで見つけた情報)」を仕入れ、「インフラ(環境)」を整える『最強の裏方』に徹する。そうやって親がプレッシャーを手放し、一歩引いた時に初めて、子どもは自分の意志でフライパンを握り、自分の足で走り始めるんですよね。
もし今、「子どもがなかなかやる気を出してくれない」と、親御さん自身が必死に頑張って背中を見せようとしているなら。一度、思い切って「主役の座」から降りてみませんか?
自分が汗をかいて走るのをやめて、子どもが輝くためのステージ作りに全振りしてみる。 主役からの引退は決して「諦め」ではなく、マネージャーにしか味わえない「人を育てる」という、極上のエンターテインメントの始まりなのです。

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